旧高月邸(宇土市指定有形文化財)
江戸時代の井戸がそのまま残る、熊本県内最古の武家屋敷
町並みに溶け込んで気づかない邸宅
宇土市中心街のそば、閑静な住宅街の一角に佇む「旧高月邸」。1830(文政13)年に建てられた、熊本県最古の武家屋敷です。
学生も行き交う道沿いにあるものの、地元出身者でも「建物自体に気づかなかった」というくらい町並みに溶け込んでいます。それは、このあたり一帯が宇土細川藩の家臣が暮らす武家屋敷が立ち並んでいた場所だからかもしれません。武家と町人の居住地を分ける門の内側、「門内(もんない)」界隈とされるこの地域は、今でもその名残があちこちで見られます。
歴史ある建物
もともと、江戸時代を通じて武士が集住していた地域は、宇土と熊本、八代、人吉の4カ所。戦前までは4カ所すべてに武家屋敷がいくつか残されていましたが、空襲で焼失したり、戦後に建て替えられたりして、現在残っているのは3カ所。宇土市の旧高月邸と、熊本市の旧細川刑部邸、八代市の澤井家住宅のみです。中でも家臣クラスの屋敷としては旧高月邸が最古のものとされます。
邸内の台所にあたる部屋には今でも、2km以上先の轟水源から引かれていた轟泉水道の井戸が残されています。江戸時代の武家屋敷と井戸が現存する、全国的に見ても歴史的価値の高い文化財です。
熊本地震から復旧!
建物は、基本的に江戸時代のままのため、非常にもろくなっており、2016(平成28)年の熊本地震で屋根瓦が落ちるなど大きく被災。翌年から1年間にわたり災害復旧工事を行い、2019年4月からふたたび一般公開が始まりました。
当時の壁や柱がそのまま残る、風情ある雰囲気は写真映えもしそう。着物を身にまとって訪れたい場所です。